狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病)

はじめに
 女性に多く発症する腱鞘炎の一つが、狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病)です。

病態と診断
 母指を大きく広げると、手首の所に2本の腱(短母指屈筋腱と長母指外転筋腱)が浮き上がります。
 この腱と、腱を包む腱鞘との間の摩擦で炎症を起こし、母指を動かすのに痛みが出る、力が入らなくなるなどの状態が狭窄性腱鞘炎です。
 この病気は圧倒的に女性に多く、20〜30歳代と50歳前後にピークがあります。20〜30歳代の女性はパソコン作業などによる母指の酷使や、妊娠・出産後のホルモンの関与、あるいは授乳など育児による新生児の頭部を保持する際の母指外転動作が原因となることが多いようです。
 中年以降の女性の場合は、更年期によるホルモン分泌変動の影響と家事による手の酷使などが原因となります。

 診断は、病歴と局所の圧痛・徒手診断テストで確定します。ご自分で診断する場合は手関節を最大掌屈し、自分で母指を最大外転させて疼痛を誘発(岩原・野末徵候=イラスト=)させます。

治療
 良性の疾患で、多くの場合は母指の使用制限や、湿布などの外用剤の使用、温熱やレーザー治療器などの消炎鎮痛療法により軽快することが大半です。
 疼痛が著しい場合や日常生活・仕事に支障がある場合は、ステロイドや局所麻酔剤を腱鞘内に注射すると、症状は軽快することが大半です。
 しかし、症状が軽減しても、すぐに親指を酷使していると再発しやすいですので、注意が必要です。また、ステロイド注射を繰り返していると、感染や腱の断裂を招くことがありますので、医師の指示に従うようにしてください。

 症状の改善がなく、治療に難渋する場合は手術が必要となる場合もあります。手術は、局所麻酔で小切開下に行いますが、大事な知覚神経が近くを走っており、先天的な腱の状態の個人差も大きいため、経験の豊富な整形外科医の執刀が望まれます。

おわりに
 周産期の女性の場合は、授乳が終了すると軽快することが大半ですので、早期の離乳も選択の一つだと思われます。いずれにせよ、ほかの疾患との鑑別も必要ですので、症状が長引く場合は、整形外科専門医の診察を受けるようにしましょう。