「リハビリ日数制限」って何?―困ったら、かかりつけ医にご相談ください―
大竹整形外科 大竹進
06年4月からリハビリ期間に制限が設けられました。整形外科に通院している患者さんの場合、けがをした日あるいは手術した日から150日で医療は「終了」になり、その後は全額自分で負担をするか介護保険でリハビリを受けることになりました。.今まで回数の制限はありましたが、151日目から医療保険でリハビリが受けられない(日数制限)という改定は前代未聞のことです。07年3月14日に見直しが決まりましたが、混乱は続いています。
経緯と厚労省の思惑
発端は、04年1月にまとめられた高齢者リハビリ研究会にあります。その後、何度も引用された「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリ医療が行われている場合がある」という文章から始まりました。しかし、議事録を読み返してみても、どこにもそのような議論はなく、厚労省の思惑で存在しない議論を元に作り出された事が明らかになりました。
その後、05年10月中医協診療報酬基本問題小委員会で初めて日数制限が公に登場します。上述の文章ととともに「疾患の特性や治療の現状を踏まえて、算定日数の上限を新たに設定してはどうか。」と提案されました。それに対し、どのように「効果があきらかでない」かについて質問があり、厚生労働省は「例えば2年3年にわたって、温熱を当てるだけとか、簡易なリハビリがずっと繰り返されている。」と答えています。しかし、これはリハビリではなく消炎鎮痛処置のことで、両者が混同されながら異なった方向に議論が進み、最終的に06年02月の中医協総会で改定されました。
医療現場での混乱
日数制限と同時に、リハビリが必要な人は継続出来るように除外規定も設けられました。当初は、これでリハビリが継続できると考えられていましたが、その後、除外規定から漏れる患者さんがいることがわかり、現場では混乱しています。
除外規定には条件が2つあります。
1. 除外対象患者(厚生労働大臣の認めた患者)
2. 「状態の改善」が期待できると医学的に判断される患者
日数を超えてリハビリを継続するには、両方の条件を満たすことが必要とされています。
除外対象では「いわゆる五十肩」、スポーツ外傷や下肢の骨折術後など長期間のリハビリを必要とする疾患も対象になっていません。また、腰や膝の痛みの原因になる変性疾患あるいは運動器不安定症*なども該当していません。さらに、改善とは「身体機能の改善」を意味し、除外される人は非常に限定的であることが解かりました。
日数制限見直しでも続く混乱
そして3月14日の中医協総会で見直しが決まりました。土田会長は、「リハビリ現場が混乱している事実を重く受け止め、日数制限を直ちに見直したい」と発言しました。この決意が今後のリハビリ医療に活かされることを期待しています。
しかし、今回の見直しでは、切り捨てられる患者さんの数は少なくなっても、ゼロにはなりません。また、維持期リハを介護から医療に戻しましたが、将来的に介護に移行する方針は変えていません。まだまだ混乱は続くことが予想されます。
大きく違う介護と医療
そもそも、介護と医療保険は一見似ていますが、両者には大きな違いがあります。介護サービスを受けるには介護認定が必要です。 認定はマヒや機能障害とは関係のない「介護の必要性」によって判定され、障害によって判断される医療リハビリの必要性とは全く違う基準となっています。
また、医療は「療養の給付=現物給付」ですが、介護保険は「費用の支給=現金給付」システムです。 介護保険では1か月の支給限度額が決められ、限度額以上は全額自費負担になります。負担出来ない人はリハビリをあきらめざるをえない状況にあります。
「かかりつけの先生」にご相談ください。
このように日数制限で現場では多くの問題が起こっています。しかし、整形外科の医療機関では必要な人に必要なリハビリを提供するために、毎日苦悩しながら診療しています。
リハビリで困っている方は、まず「かかりつけの先生」にご相談ください。患者さんの立場に立って問題解決のお手伝いをします。