ロコモの定義(介護予防の観点から)および
ロコモとフレイルの関係 / 私見
二階堂医院/二階堂 元重
1.ロコモの定義(介護予防の観点から)
「ロコモ」最新の定義は、2017年9月日整会が発表した「運動器の障害により移動機能の低下をきたした状態で、進行すると要支援、要介護となるリスクが高くなる」となっている。
運動器の障害ベースで移動機能が低下した状態は全てロコモとする定義であるが、後半の「進行すると要支援となるリスクが高くなる」からは、ロコモは要支援未満という解釈もできる。
全国市町村は、地域包括ケアシステムの一環として進める介護予防事業の仕組みの中で、要支援予備群を「二次予防事業対象者」として全高齢者の10%枠で認定し、積極的に介入を展開している。
この枠は、移動機能の低下が始まった状態として、その多くは日整会ロコモ臨床判断値上の「ロコモ度1」の範疇であり、ロコモの定義からもまさにこのグループこそが「行政上のロコモ」(1)と考えてよい。
一方、運動器の障害は、転倒骨折を含む運動器関連として要支援要因の30%超で第1位を占めている。
このグループは移動機能の低下が進行した状態として、その多くが「ロコモ度2」と思われる。
そこで、この両群すなわち介護予防事業における二次予防事業対象者群さらに運動器疾患ベースの要支援対象者群をあわせて「学術上のロコモ」(1)+(2)と考えれば理解しやすい。
さらに「健康寿命」の定義が「自立した生活ができる生存期間」ということで、これもまた要支援未満と解釈すれば、健康寿命延伸のために整形外科医は、両群への対策を分けて考えなければならない。
すなわち前者へはロコトレの積極的介入により要支援への移行阻止に努め、後者へは運動器疾患の早期診断早期治療により要支援対象者の縮減を図ることが必要となる。
この両群への対応により、介護予防すなわち「ストップ・ザ・ロコモ」に寄与することが、健康寿命延伸のため我々整形外科医に課せられた使命と考えている。
(図1)
2.ロコモとフレイルの関係
吉村典子先生が2005年から開始した大規模住民コホートROAD Reseach on Osteoarthritis / Osteoporosis Against Disabilityの調査から、(Osteoporosis Int.2018,29:2181-2190、日整会誌Vol.93 No.4 April 2019)ロコモ、フレイル、サルコペニアのそれぞれの有病率、合併率について報告している。
2013年から1年間の調査参加者1,336人のうち、60歳以上963人中ロコモ度1が81.0%、ロコモ度2が34,1%に対し、サルコペニアは8.7%、フレイルはわずか4.5%、さらにサルコペニアの98.8%、フレイルでは全例がロコモ度1を合併していたという結果である。
明らかにフレイル、サルコペニアはロコモに包含されることを証明している。
先に述べた定義に従って、ロコモとフレイルの関係についてSchemaにしてみたのでご覧いただきたい。(図2)
ロコモを二群に分けて考えると、サルコペニア、フレイルはロコモ(運動器機能不全群)に包含されたひとつの病態として捉えることができる。
結果、ロコモ度1の段階での介入による移動機能低下の予防がフレイル、サルコペニアの予防、ひいては要支援移行阻止につながる可能性をも示唆しており、大変興味深い。
(図2)