大腿骨頚部(近位部)骨折

 人は年齢を重ねるごとに骨がもろく(骨粗鬆症)なり,しかも足腰が弱くため転倒しやすくなります.従ってちょっとした転倒でこの骨折が生じます。高齢者の骨折のうちで,”寝たきり”になる最大原因がこの骨折です。
 この骨折は大きく2つの型(内側と外側)に分けられます.この型と骨のずれの程度と本人の全身状態により,治療方針が決められます.その治療方針に求められる原則は,より確実・より安全・より体に負担をかけない・早期離床(出来るだけ早いベッドからの立ち上がり)であり、つまりは”寝たきり防止”です。

骨折の型(図1)
 骨折が股関節の関節の袋(関節包)の中で生じた(頚部)内側骨折と外で生じた外側骨折(転子部骨折)に大きく分かれます.一般に内側骨折は,つきにくく骨頭壊死という合併症の可能性が高い.外側骨折は骨がつきやすいという特徴があります。
一方,当然骨のずれが大きいほどつきにくいといえます。

全身状態
 少なくとも歩けて自立していた方には,早期離床のためにできる限り早めの手術をおすすめいたします。
 例外的に手術しないのは,全身状態が悪く手術に耐えられない,元々歩行しておらず(寝たきり・車いす全介助)手術を望まない場合のみです。

治療:手術
 内側骨折は、ずれがごく少ない場合に限りボルトやピンで留める骨接合術を行いますが、ずれがある場合には、骨頭部分を取り除き人工骨頭を入れる人工骨頭置換術を行います。外側骨折は、一般にボルトやピン、髄内釘などの最適な骨接合術が選ばれます。
 いずれの手術においても、治療方針の原則(早期離床・確実・安全)を満たすための改良がなされており、安心して受けていただけます。

治療:リハビリ
 適切な手術により、2~3日以内にベッドを離れ歩行訓練などリハビリ開始となります。傷の状態、そしてレントゲンで骨折部の状態を確認しながら歩行訓練を重ねて、元の生活の状態に戻る努力をします。
 一方、全身状態のため手術しない場合・骨癒合が得られない場合でも、出来るだけ寝たきりにならないように、痛みの軽減をはかりながら車いす以上の自立を目指してリハビリを行ってゆきます。