投球肩

はじめに
 投球肩(いわゆる野球肩)は文字通り投球動作をすることによって発生する痛みで、発生のピークは15~16歳にあり、投手と捕手に多いとされています。投球動作は全身運動であり、その障害は肩関節のみに起因するのではなく、身体全体に関係していると言われています。

病態と診断
 投球動作は、片足が地面から離れるワインドアップ期、上げていた片足が地面に接地し、腕が後ろにまわるコックアップ期、後ろにまわった腕が前に振り出されボールが手から離れるまでの加速期、ボールが手から離れてからの減速期、腕が完全に振り下ろされるまでのフォロースルー期に分かれます。
 どの動作の時に痛みが出るかによってある程度、病変部位を推測することが可能になります。
 肩の関節は、かゆいところに手が届くよう、全身の関節で最も広い範囲に動くことが可能であるために複雑な構造を有しています。しかし、投球動作においては、150㌘弱のボールを静止している状態から数分の一秒という短い時間で時速100㌔㍍以上に加速しますので、その構成要素(腱板・関節唇・関節包複合体・上腕二頭筋長頭腱など)が損傷しやすいのです。
 そのため、最近はプロ野球でも投手の投球数制限傾向があるように、特に成長期の小・中・高校生には障害予防の観点から、投球数制限がなされています。
 診察の際には、理学所見として肩の関節可動域検査によって痛みが生じる位置を見極めるとともに、損傷した組織に対して人為的に刺激を加えることで症状を誘発するストレステストを行います。さらに、レントゲン撮影・エコー検査・CT・MRIなどの画像診断を併せて行うことを通してより正しい診断を下すことができます。

治療
 全ての障害に共通するのは、原因がオーバーユースによるものであるため、まずは投球動作の禁止(3から4週間)の後、リハビリテーションを行います。それでも痛みが取れない場合は、手術治療が必要となることもあります。

おわりに
 投球肩(野球肩)の治療の第一歩は、まずは投球動作の禁止にあります。
禁止期間は3から4週間になりますが、その間ストレッチ運動や適切な筋力増強訓練などが必要となりますので、投球時に肩痛がある場合は、ぜひ整形外科専門医への受診をお勧めします。