歩くだけで健康は保てるのでしょうか?
大阪府吹田市 戸田整形外科リウマチ科クリニック 戸田佳孝
60歳以上の方を対象に行ったある調査では「健康のために行っている運動は?」という質問に対し て「散歩」と答えた人が男性では45.8%、女性で37.7%と圧倒的多数でした。このように日本人の高齢者の運動といえば、「一に歩く」が常識になっているように思います。
厚生省の健康日本21計画でさ えも運動身体活動については「1日平均平均歩数を1000歩増加」と歩行の事にしか触れていません。 しかし、我々整形外科医の視点からは、歩行だけで本当に健康になれるのかは疑問です。
たしかに歩行などの有酸素運動(呼吸しながらする運動)は持久力を高め、循環器疾患などの内科的疾患には有効でしょう。しかし、筋力トレーニング等の無酸素運動(呼吸を止めて力を 出す運動)をしなければ、筋力は衰えていきます。筋力は曲げる筋力より伸ばす筋力が老化しやすく、腕より脚の筋力の方が老化しやすいです。特に膝を伸ばす筋力は30歳の筋力を100%とすると70歳 では40%にまで低下します。
また膝を伸ばす筋力の低下は全国に500万人いる変形性膝関節症(老化な どによって軟骨が擦り減る病気)の一つの原因だといわれています。だから、多くの整形外科医院の リハビリ室では膝を伸ばす運動をはじめとする様々な筋力訓練を励行しています。
また、ストレッチ 運動で筋肉を柔らかくし血液を流れやすい状態にする事も大事で、足首の柔軟性は転倒骨折予防に重要です。転倒骨折予防といえば、バランス感覚を養うために目を閉じて片脚でできるだけ長く立てる ようにする運動も必要だと思います。
このように健康を維持するためには、有酸素運動、無酸素運 動、ストレッチ運動、バランス運動を行う事が必要です。また、人それぞれにどの運動をどんな割合 で行うべきかは異なります。例えば、変形性膝関節症患者さんに対して唯「もっと歩け」では百害 あって一利なしですので、体重をかけない筋力訓練を中心に我々整形外科医は指導を行います。
健康のための運動を行う前に,整形外科の主治医に「自分がやってはいけない運動、やるべき運動」につい て是非御相談下さい。
少子高齢化と介護医療費の増大を抑制する為にも、「病気を治療する」時代か ら「病気を予防する」「健康を増進する」時代への転換を訴えているサイトで す。アメリカの国家プロジェクトと我が国との政策を比較しながら、一昨年よ り検討を重ねてきた健康増進計画「健康日本21」
健康日本21計画とは
これは、厚生省が初めて作った目標志向型の計画です。
1)「栄養・食生活」
成人1日あたりの平均食塩摂取量を減少 (13.5g → 10g)
成人1日あたりの野菜の平均摂取量を増加(300g → 350g)
自分の適正体重を認識し、 体重コントロールを実践する人の割合を増加
(男性:82.6% 女性:80.1% → 90%)
20~30歳代男性の朝食の欠食率を減少
(20歳代:32.9% 30歳代:30.5% → 15%)
「運動・身体活動」
「散歩をしたり、早く歩いたり、乗り物やエレベーターを使わずに 歩くようにしている人」を増加
(男性:25.7% → 32% 女性:32.5% → 40%)
1日平均歩数を1000歩増加
(男性:8202歩 → 9200歩 女性:7282歩 → 8300歩)
「休養・こころの健康」
調査1ヶ月間にストレスを感じた人の割合を減少 (1割減)
睡眠で休養が十分にとれていない人の割合を減少 (1割減)
アルコール」 1日3合を越えて多量に飲酒する人の割合を減少 (2割減)
未成年の飲酒をなくす