小指側のシビレの原因〜肘部管症候群〜

はじめに
 机の角にひじをぶつけて、小指の先までシビレがきた経験は、誰にも1度や2度はあるでしょう。そのようなシビレが続く尺骨神経の障害が肘部管症候群です。

肘部管の構造
 尺骨神経は、ひじの内側にある上腕骨内側上顆という骨の出っ張りの後ろ側と靭帯・筋膜で形成されるトンネルを通過します。そして、その部分では、主な末梢神経の中で最も皮膚表面に近く、硬い骨のすぐ上を走っており、神経が障害を受けやすい環境にあります。

発症の原因
 変形性関節症による骨棘(骨の出っ張り)形成や、肘部管内のガングリオンは肘部管内の容積を減らし、尺骨神経を圧迫します。肘部管症候群は手根管症候群と異なり、肉体労働やひじ関節外傷による変形性関節症を起こしやすい中年以降の男性に多く発症します。

症状と治療法
 尺骨神経麻痺の症状として、薬指の小指側と小指と前腕から手にかけての小指側のシビレ(知覚障害)、麻痺が進行すると手の甲の筋萎縮(骨間筋麻痺)とそれに伴う薬指・小指の鉤爪(鷲手)変形が起こります。
 ひじ関節を90度以上曲げると肘部管の内圧は3倍以上になり、尺骨神経の麻痺症状が出やすくなります。そこで、ひじ関節を曲げて作業をするとシビレが増強する患者さんには、ひじ関節があまり曲がらないように職場のいすを高くする工夫を行ったり、就寝時にひじが曲がらないように副木を当てたりすることがあります。
 症状が進行すると、手術が必要になります。最近は、症状が軽い場合は小さな皮切で行う工夫もなされるようになりましたが、骨を切除しなければならなかったり、神経の走行を大きく変更したりする必要性がある場合もありますので、早めの受診をお勧めいたします。

おわりに
 整形外科専門医を受診し、知覚検査・理学検査・神経伝導速度の測定など適切な検査と診断の上に、各人の病態に適した治療を受けましょう。病気が進んでいると保存療法にしろ手術療法にしろ、シビレ症状が取れるのには長時間を要することが多い疾患ですので、気長に治療に専念しましょう。