腰痛症

 腰痛はごくありふれたもので、5人中4人もの人々が生涯のある時期に腰痛を経験します。
 腰痛は成人の障害として最も多く、年齢が高くなるにしたがって増え、60歳を超えると半数の人が何らかのきっかけで腰痛を起こしています。

原因
腰痛の原因は数多く、特定の原因を突き止められないこともよくあります。
 最も多い原因の1つに、筋肉や靭帯の挫傷とねんざがあります。挫傷やねんざは、ものを持ち上げたり、運動したりしたとき、転倒や自動車事故などで予想外の向きに体が動いたときに起こります。腰のけがは体調が悪いときや、背骨を支える筋肉が衰えているときに起こりやすくなります。
 悪い姿勢、不適切な持ち上げ方、肥満、疲労などもかかわっています。
変形性脊椎症、椎間板の破裂やヘルニアも腰痛の原因になります。高齢者の腰痛の原因で最も多いのが脊柱管狭窄です。骨粗しょう症では、骨密度が減って骨折しやすくなります。
 腰痛は体の別の部分に起こった痛みに起因することもあります。たとえば腎臓、膀胱、子宮、前立腺などの痛みが腰痛として感じられます。たとえば月経前症候群や膀胱の感染症が腰痛の原因になることもあります。
 その他、頻度は少ないけども帯状疱疹、多臓器からの癌の腰椎転移、骨の癌(骨髄腫)、繊維筋痛症、脊椎側わん症などがあります。
 ストレスも腰痛に寄与するようですが、そのしくみはよく解っていません。また、きつい肉体労働、肥満、喫煙、運動不足なども腰痛の原因となります。

症状と腰痛の種類
 腰痛は、原因と痛みの種類によって、間欠的なものと恒常的なもの;表層的なものと深部のもの;鈍い痛み、ズキズキする痛み、刺すような鋭い痛みなどに分かれます。腰痛にはいくつかのタイプがあります。
 局所的な痛みは、腰の特定の領域だけに起こります。これは通常挫傷やねんざによります。けがをした部分に突然の痛みを感じます。局所的な痛みは、姿勢を変えたり軽い運動の後にストレッチを行うと、しばしば痛みが和らぎます。運動が強すぎたり、じっと動かないでいると、痛みが悪化する傾向があります。局所的な痛みには、痛みが途切れなく続く場合と、鋭い痛みが間欠的に起こる場合があります。腰にふれると痛みを感じるでしょう。通常この痛みは数日から数週間かけて徐々に解消します。
 脊髄神経根の圧迫による痛みは、椎間板ヘルニア、変形性関節症、骨粗しょう症、 脊柱管狭窄などによって起こります。痛みはしばしば重いものを持ち上げた後、数分から数時間以内に起こりますが、自然に起こることもあります。このタイプでは、鋭い痛みが伴う傾向にあり、ときには激しい放散痛がその上に重なります。どの神経根が圧迫されているかに応じて、体の他の部分にも痛みが広がります。一般的には痛みは腰から尻へ、さらに圧迫されている側の脚へと広がって座骨神経痛をもたらします。
 椎間板ヘルニアが原因の場合は、長い距離を歩くと痛みがひどくなります。脊柱管狭窄が原因の場合は、歩くときのように背筋を伸ばすと痛みが悪化し、もたれかかるように脊椎を前方に曲げると和らぎます。
 圧迫骨折が原因の場合は、痛みは背中の特定領域に限局して突然に起こり、立ったり歩いたりすると悪化します。通常、痛みと圧痛は徐々に弱まって数週間から数カ月後には消えてしまいます。
 神経根がひどく圧迫されているときには、痛みに脚の筋力低下やチクチクする感覚を伴い、膀胱と腸管のコントロールが失われることさえあります。
 他の臓器に由来して起こる関連痛は、体の奥深くで、比較的広範囲(びまん性)の痛みが持続します。動作には影響されないのが典型的で、夜間に悪化します。たとえば、腎臓の感染症では背中の中央よりも脇側に痛みを起こします。

診断
 腰痛の診断は以上の解剖的知識、症状、病 歴、診察結果から推定されます。診察の一部として、患者にある種の動作を行ってもらい、それによって痛みの種類を判定します。
 腰のX線検査は、椎間板ヘルニア、変形性関節症による変性、骨粗しょう症による圧迫骨折、脊柱側弯症を発見できます。MRI検査やCT検査では鮮明な画像によって、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄、癌の診断を確定したり、逆に除外することができます。
 まれにMRI検査でもはっきりしないことがあります。その場合には、CTを使った脊髄造影が必要になります。神経の損傷個所を確認するために筋電図を取ることもあります。
 なお、正確な診断と治療には「整形外科専門医」が必須です。ご心配であればできるだけ、自己判断せずに、「通院に便利なお近くの整形外科」を受診ください。