骨の機能は2つある

はじめに
 現在、寝たきりになる原因としては、骨折が脳卒中についで2番目に多く、関節や脊椎の変性疾患を加えると整形外科領域の疾患が全体の約三分の一を占めています。ここでは、骨折の原因として最も重要な骨粗鬆症について説明いたします。

骨粗鬆症とは
 骨は体の中で2つの働きをします。その一つは体の支持組織として、移動したり、物を投げたりするときの筋肉の支点となる働きです。もう一つは、生命活動に重要な血液中のカルシウム濃度を維持するための補給庫としての働きです。
 血液中のカルシウムが不足すると、直ちに骨は溶解され吸収という現象(骨吸収)が起こります。反対に、血液中のカルシウムが充足している(若い)時は吸収された部分は修復されます(これが、成長の時期にあたります)。
 若いときにカルシウムを充分蓄積した骨でも、女性では閉経期を境にカルシウムの蓄積と吸収の逆転現象が起こり、次第に骨が減ってくるという、いわゆる骨粗鬆症が起こりやすくなります。

診断
 骨粗鬆症の診断では、基本的には ①脊椎のレントゲン撮影 ②骨密度測定 ③骨代謝マーカー測定 が行われます。
 整形外科の専門医であれば、①だけでも大まかな診断がつきます。②には種々の測定機器があり、骨に含まれるカルシウムの量を数値的に知る事が出来ます。機種によって一長一短ありますが、治療に際しては同一機種で変化を見て行く事が大切です。③には骨吸収マーカー(カルシウムの支出に相当します)と骨形成マーカー(カルシウムの収入に相当します)があります。
 収入と支出のバランスが崩れて赤字になると骨粗鬆症となります。これらを計測することによって、治療薬の選択・治療効果の判定を具体的な数値で知る事が出来ようになりました。

治療
 日本の健康保険では、骨粗鬆症の治療薬として現在(薬効分類として)7系統の薬剤が認められております。欧米では、2?3種類しか認められていない国が多く、日本の骨粗鬆症治療は世界をリードしています。
 専門医の適切な診断の下、一人一人に最も適した治療を受けることが出来る日本の保険制度を有効に利用しましょう。

最後に
 骨粗鬆症は、多くの場合自覚症状が無いまま、軽微な原因(つまづいて転んだ、尻餅をついた、転びそうになって手をついた)で骨折を引き起こします。ですから、そうなる前から予防と治療が大切です。
 危険因子としては①閉経後の女性である事、②年齢からその人の体重を引いた値が20以上(10以下であればまず心配ありません)、③最近背中が丸くなり、身長が低くなってきたような方は要注意です。