少年期の肘関節痛
はじめに
肘の障害の代表的なものに、野球肘があります。野球肘とは、投球動作によって起こる肘の障害すべてを表します。発育期の子どもでは骨や軟骨、筋肉などが未発達なため、体と連動した一連のスムーズな投球動作が困難となります。
したがって、投球フォームは手投げの状態となり、肘に負担がかかりやすくなります。さらに、間違った練習方法や指導、練習のやり過ぎが加わるといろいろな肘の障害が発生します。
▽肘の内側が痛む▽曲げると痛い、伸ばすと痛い▽投げた後、肘がだるい▽練習中は大丈夫なのに、家に帰ると腕がだるい▽投げる瞬間に肘の内側に痛みが走る―。
以上のことが、1つでも該当すれば、野球肘の可能性があります。
原因と治療
野球肘の大部分の内側型は前腕屈筋群の使い過ぎにより、その起始部の繊維の微細な断裂と不完全な修復の反復によって発生するものと考えられています。
発育期の子どもでは、起始部の成長軟骨の変形、肥大・分節化が起こり、投げ過ぎや投球フォームが悪かったりすることで、肘内側疼痛を生じます。これは腱の牽引力により、骨の付着部に負担がかかり、障害が出ます。約3週間の投球禁止により、症状は軽快することが多いとされています。痛いのを我慢していると、靭帯が伸びてしまったり、さらに肩などのほかの部分に影響が出てしまいます。
外側型は反復する肘外反ストレスにより、上腕骨小頭や 骨頭の関節軟骨やその下の骨に亀裂が生じ、最後には軟骨片がはく離し、関節内の遊離体(関節鼠)となる病気です。頻度は内側型と比べると少ないですが、長期間(半年から場合によっては1年半以上)の投球動作の禁止を強いられることになります。
症状は肘関節の外側の疼痛・圧痛・関節の可動域制限であり、筋肉の萎縮も認められることがあります。早期に発見され、症状の初期であれば、投球の禁止のみで自然治癒が促されることがありますが、放置して投球を続けると病巣が離れて遊離体となり、スポーツを継続したいなら、最終的には手術を要する場合があります。よく野球選手が肘の軟骨を取る手術をしたというのがこの手術です。
おわりに
野球肘の場合は早期発見、早期治療することが一番大切です。投球動作で肘の疼痛を生じた場合、早めに整形外科専門医の正しい診断を受けましょう。