壮年男性・高齢女性の手関節痛

はじめに
 月状骨軟化症(キーンベック病)は手関節(手首)に痛みが発生する疾患です。
 原因としては月状骨に微小な外傷が繰り返され、栄養血管血流不全が発生し発症するとされています。働き盛りの青壮年期に初発することが多いです。手を酷使する職業の人に多いとされていますが、時に主婦や事務職、また高齢の女性に発症する場合もあります。

症状
 男性の利き手に多く発症し、症状としては手関節の運動時痛、握力の低下、関節可動域の減少が主となっています。痛みのため、手を付くことができなくなる症状が出たり、月状骨に一致して腫れと圧痛を認めます。

診断
 初期段階ではレントゲン写真に変化は少なく、早期診断には臨床症状やMRI検査などが有用です。症状が進行するにつれて、レントゲン写真の変化がはっきり分かるようになり、最終的には月状骨の破壊のみでなく、手関節の変形性関節症変化も現れてきます。

治療
 ごく初期の段階であれば手関節の外固定(装具など)を行い、1〜2カ月後に臨床症状とMRIで治療効果を判定し、外固定を継続するか否かを決定します。しかし、実際にはごく初期での診断は困難であり、保存的治療を行う機会は少ないとされています。

 保存的治療法で不十分な場合は手術療法の適応になります。手術が必要か否かの判断はレントゲン写真により壊死の進行、破壊の状態を見て決定することになります。早い時期に手術をすれば、その効果は十分に期待できるので、手術は壊死、破壊が進行しないうちに受けた方が良いとされています。手術の様式はさまざまありますが、それぞれが良い成績を上げており、どの術式で手術するかは医師の判断に委ねられます。

おわりに
 月状骨軟化症は、初期には診断が困難なことが多いのですが、進行するにつれレントゲン写真に明らかな変化が現れ、容易に診断することができます。放置すれば骨の壊死、破壊が進行するため、発見次第に何らかの治療をしない限り治癒することはないといわれています。従って、手関節の痛みが続いたり、腫れたりした場合は様子を見ずに整形外科専門医への受診をおすすめします。