熱中症の予防について
熱中症とは、一言で言えば体の中の水分と塩分が失われる事によって体の中の水分バランスが崩れて、いろんな症状が出現し、最悪の場合には、2003FIFAコンフェデレーションズ・カップのプロサッカー選手のように死に至る病気です。
熱中症と言えば、晴天で高温の時に起こるという印象がありますが、そうとも限りません。比較的低温で湿度の高い時にも起こる事があります。たとえば、曇り空の無風の時なども起こりえます。
人は、体温調節をするために汗をかきます。その汗が蒸発する事によって自らの体を冷やすわけです。晴天・高温の時には汗も蒸発はしますが、それ以上の高温のために発汗が間に合わない事があるのです。そういう時に、水分を補給していないと、出すべき汗が無くなってしまう事があり、そういう時に熱中症が起きます。
その一方、梅雨時の風が少ない時、持続した運動をしている時、多量の汗をかくわけですが、湿度が高いために汗が蒸発する事ができない事になります。そうすると、体内温度はどんどん上がるわけですが、汗が蒸発しないために、さらに対外に水分を絞り出す事になります。そうすると、晴天・高温の時と同じような状態になるわけです。
昔は、運動中は水を飲むなというのが常識でした。しかし、現在ではこれは大きな誤りだという事が常識となっています。夏期の運動時には、いかに上手に水分を取るかという事がポイントになっています。例えば、最近は高校のインターハイや、中学校のサッカーの全国大会では前半と後半の途中に水分摂取タイムを取ることになっています。国際試合やJリーグなどでも、ボールが外に出た時などに頻繁に選手が水分を取る様子を見る事が多くなって来ました。これは、熱中症を予防するためです。陸上競技の練習中や試合でも同様です。練習中や試合中にはお子さんは集中する時には、自分の状態に気づきません。そういう時が危ないのです。また、晴天の時には直射日光を頭部に直接受けるの防ぐ帽子をかぶる事も効果があります。
理想的には、20分に一回は水分と少量の塩分を取る事が、熱中症の予防とパーフォーマンスの向上になるという事がスポーツ医学の分野では常識になっています。遅くとも、30分に一回は水分を取る事が必要でしょう。汗の成分は水だけでなく、塩分をかなり含んでいます。そのため、失われた水分と共に少量の塩分も取る事が大事です。昔、水を飲むなというのは塩分を取っていないために、水だけを取ると体内の塩分濃度が薄くなってしまうために、返って脱水症を起こしてしまうためだったとも考えられます。これは、現代のように熱中症の知識がなかったためですね。しかし、今ではスポーツ飲料がありますから、塩分も同時に取る事ができるようになりました。陸上競技の練習・試合中にも定時的に100ccずつでも水分を取るのがいいでしょう。
ここで、ちょっと賢い水分の取り方なんですが、今のスポーツ飲料は少し塩分が多いようです。ですから、うまい取り方は、スポーツ飲料を水で半分に薄めるとか、水やお茶などと交互にとるようにするのがいいようです。 さて、熱中症の症状ですが、先に触れたようにいろんな症状が出ます。基本的には脱水症なんですが、初期には喉が渇いたり、ふらふらしたり、心臓が異常にどきどきしたり、冷や汗が出たり、頭痛や吐き気が起こったりするのは熱中症の始まりと考えられます。そういう時には、早めに日陰や風通しのよい所に休んで、スポーツ飲料等と取る事が大事です。スポーツ飲料がない時には、冷たい水やお茶でも結構です。できれば、同時に少量の塩とか梅干しなどの塩分を含む食品を取る方がいいですね。
意識が朦朧としたり、全身に痙攣を起こしたりした時は重症ですから、直ちに全身を冷やして救急車を呼ぶ方がいいでしょう。もし、そういう状態になりそうな時やなった時は大きな動脈が皮膚の近くに出ている場所、首の両側や脇や足の付け根を水や氷で冷やして下さい。それで、少しでも体温を下げる事ができます。
日本体育協会公認スポーツドクター
日医認定健康スポーツ医
松岡整形外科 松岡純弘